ユネス講
総会に続いて行われた卓話「ユネス講」では、福井県立大学地域政策学部教授の朝倉由希さんを講師に迎え、「文化の今日的重要性」をテーマにご講演いただきました。
まず始めに、「文化と言ってもはっきり定義するのは難しく、広義の文化と狭義の文化があり、広義とはある集団で共有される思想、習慣、信条、価値観の事を言い、狭義では芸術文化等の絵画、音楽など人間の精神的活動の所産の事を言います。」と説明され、福井の文化として越前和紙、漆器などの伝統工芸、各地の多様な食文化、祭り、方言、信仰、地域の風習などを挙げられました。
また、UNESCOが2001年に採択した「文化的多様性に関する世界宣言」における文化の定義を紹介されました。同宣言では、「文化とは、特定の社会または社会集団に特有の、精神的、物質的、知的、感情的特徴をあわせたものであり、また、文化とは、芸術・文学だけでなく、生活様式、共生の方法、価値観、伝統及び信仰も含むもの」とされています。
続いて、文化を機能的側面から見ると①コミュニケーションの手段として、表現により心を動かす。蓄積により文化財としての価値を持つ音楽、絵画、文学、演劇、工芸、建築など歴史を経て人が作り出したもの。②地域やそこで生きる人々の記憶など、先人の知恵、受け継がれてきた技術や言葉、歴史的経験などを、次の世代へ伝える役割を持つもの。③関係をつくるものとして、人と人、地域と地域、国と国の交流を促し、相互理解の礎となる、と紹介されました。このように文化とは広い概念であり、人類の営みの蓄積であり、生きる基盤となるものであるとのことでした。
次に文化政策の動向が紹介されました。従来、文化政策は「文化財保護」と「芸術文化振興」など狭義の文化を柱としてきました。2017年の文化芸術基本法は、他領域との有機的連携(例えば観光、街づくり、国際交流、福祉、教育、産業その他との連携など)が規定されました。この頃から、文化の幅広い役割が政策上でも強調されるようになっています。文化政策の根拠として文化固有の意義や価値がある一方で、近年では、社会・経済的価値を生み出すものとしての期待されるようになっています。文化財保護が「保存」重視から「活用」に移ってきていることは、その顕著な変化であるとのことです。
留意すべき点として、文化にさまざまな役割が期待されることは、文化を地域発展の基盤に位置付けるうえで重要であるものの、成果が見えやすく、金銭的価値や数値で示しやすい指標だけで文化を評価することには危うさがあると指摘されました。交流、つながり(社会関係資本)、社会包摂、地域の誇りやアイデンティティやウェルビーイング等の見えにくい価値をいかに政策における合意形成に組み込むかが課題であり、文化の多様な意義を福井も各地域で主体性をもって議論し推進することが必要だろうとのことでした。
最後に、これからの社会における文化の重要性について述べられました。人口減少や高齢化が進む中で、地域の持続可能性を考えるうえで文化は欠かせないものであり、文化は「地域の誇り」を支えるものです。また、地域固有の文化資源は外部への発信力を持ち、関係人口の創出にもつながります。デジタル化やAIが進展する時代だからこそ、人間としての感性、共感、想像力、他者への敬意、多様性を認め合う力が求められます。そうした力を養うのが文化であり、文化は対話の基盤となり、相互理解や平和にもつながっていくとの考えが示されました。
朝倉さんは一乗谷の奥のご出身で、現在も同地にお住まいです。先日の5月5日には、大学生になった上のお子さんが、地区の「したんじょう行事」に参加するために帰省されたとのことです。お子さん二人は、小さい頃から地区の行事などに参加してきており、ご自身が気づいていなかった福井の文化の価値に、お子さんの行動を通じて気づくことも多いと話されました。小さい頃から文化に触れることは大切であり、実際に体験し、実感することで、その価値に気づくことができるとのお話でした。
「文化」を意識としてわかっていたつもりでしたが、まだまだ奥深いものだと認識しました。とても有意義な時間となり大変参考になりました。

参考:
ユネスコは「文化政策と持続可能な開発に関する世界会議2022」を文化政策が持続可能な開発のためには重要な役割を果たすことが国際的に共通理解となってきていることを踏まえ40年ぶりに開催。持続可能な開発、平和、安定、強靭性、社会的包摂と結束、環境保護、持続可能で包摂的な成長の力としての文化の役割、多文化人間社会の基盤を支える人間中心で状況に応じた開発を促進する役割を持ち、文化外交を通じて国家間及び国家間の対話と連帯を可能にする文化の力として「グローバルな公共財としての文化(Global public good)」という考え方が示されました。
