「福井をマーケティングで考える」をテーマに『ユネス講』
総会に続いて行われた「ユネス講」では、(新会長に選出された)福井県立大学副学長で経済学部教授の北島啓嗣さんを講師に講演が行われました。講演は先ず「マーケティングって何」から始まりました。「マーケティングとは物事を顧客の立場から考え、顧客のニーズを把握し販売につなげること」2001年に開業したUSJは、バックドラフト、ジョーズやETなどのハリウッド映画をコンテンツとしたことから3年後の2004年には事実上の経営破たん状態なった。その後、子供たちがよく知っているワンピース、コナンなどのコンテンツを展開することで経営が回復した。このことから顧客の立場や満足を考えることの大事さと自分たちの論理とのバランスをどうすり合わせるかがマーケティングの基本だと前置きしました。その上で地域活性化のためには、何を前面に打ち出すのか、ブランドは、ターゲットは、発信戦略は内側ではなく外側からの視点、限られた予算の使い方などを検討することが重要だと話しました。
福井の観光を考えた場合『自然豊かで美味しいものがある』は当たり前。集客は地域外の人が対象。関東圏をターゲットにするとすれば関東の会社にマーケティングをまかせる。「くまもん」は大阪からの集客を意識して成功した。知名度が足りないからといって工夫しないで宣伝しても無駄が大きい。知ってもらうための宣伝はどう工夫するのか。人が動く場合、情報に対する判断は身近な人に影響されることが多い。マスコミの力だけではだめで、SNSの力を利用したりして、一気に行動パターンを変えることは出来ないが、ファンを少しずつ作り、小さな事の積み上げを地道に展開することが重要だ。
福井に行ってみたいと思わせるためにはまず他県との差別化が必要。そのためには地域のイメージを統一してくり返し定着させること。だがこれが難しい。さらに、越前といった旧国名は少し離れた地域の人にはわかりにくい。また地名でも都市名でいくか県名でいくか。神奈川県だと横浜、兵庫県だと神戸とにスポットを当て他の地域は強調しない。恐竜はどうか。成功したブランドではあるが余りお金を落としてもらえない。あわせて日帰りで帰ってしまう問題もある。時代・歴史はどうか。幕末の松平春嶽、橋本左内、由利公正、朝倉一族、などが考えられるが、それぞれ重要だが多彩、多様すぎて統一したイメージ、ストーリーにできてない。宣伝すれば何とかなるという事ではなく、統一した福井のブランドに繋がらず、結果たくさんの人に来てもらう事も難しい。福井に来た人が地元に戻ってからどう発信してくれるのかが大事であり、地域・文化などをもう一度見つめ直し、コアな客層に特化した素材をみつけ語ることを考えたい。福井には素晴らしいものがある。しかし、それを自分の言葉でその魅力を説明し、どう見せていくか。自分たちが知っているようで実は知らないものがあるのではないか。ストーリーをどうつくるのか。顧客が何を求めているのか。それにどう対応するか。福井の場合は少数でもコアな人々、マニアに知ってもらい、それが結果として束になって福井ファンになるのが方向性ではないか。また、私たち自身が人・地域・文化・歴史・産業などについて少しでも多く発信できるようにならなければと話しました。